低膨張金属インバーについて
低膨張金属とはその名前の通り温度変化による膨張係数が極めて小さい金属材料で、インバー(Invar)とかアンバーと呼ばれます。InvarとはInvariable Steelから名付けられ、変形しない鋼という意味です。
よって基準器やマグネスケールのフレームなどに使用すると、温度管理された環境外でも、温度変化による寸法の変化が無いため精度が維持されます。
インバーが登場する前は、低膨張金属としてイリジウム、タンタル、タングステンが使用されたが、とても高価なため用途が限られたが、インバーの登場で安価でさらに溶接性、弾性、電気伝導性など長所が多く様々な分野で使用が広がりました。
熱膨張が少ないインバートと、ステンレスなど熱膨張する材料を貼り合わせ、クラッドとして使用したのがバイメタルです。熱膨張率が異なる素材を張り合わすことで、温度が変化すると曲がる特性が表れます。
その特性を利用したのがサーもスタッドなど温度スイッチになります。
クリスマスツリーの点滅する豆電球は、接点にバイメタルが使用されています。通電により電球が点灯することで、温度が上昇するとバイメタルの接点が離れ消灯する。温度が下がると再度接点がONになり点灯するサイクルが繰り返され点滅します。
インバーは熱膨張が少ない材料ですが、それ以外にも他の材質の熱膨張係数と同じ数値に合わせた材料もあります。
例えばガラスと同じ熱膨張係数を持つものや、セラミックと同じ熱膨張係数など、組み合わせて使用する用途で最適なものを選択する必要があります。
熱伝導率が低いため、切削の加工条件は、低回転で切り込みが大きい方が良いという話をよく耳にします。
36Invar(FN36)について
36インバーは-250℃〜+200℃の温度範囲内で熱膨張係数が極めて小さい材料です。
基準片やスケールとして使用すると温度変化による数値の変化がないため、安定した計測が可能で、同じ理由で、光学機器やレーザー測定器などにも使用され、温度変化による補正を最小限にすることができます。
-200℃の低温でも温度変化が少ないため、液化ガス関連の機器にも使用されます。液化ガスの輸送ラインのパイプが熱膨張や収縮を繰り返すと、金属歪の影響で亀裂などの原因になります。
CFRPなどの成形用モールドに使用することで、温度変化による寸法の変化を最小限に抑えることができます。
人工衛星は太陽光が当たる箇所と裏面では数百℃の温度差があります。よってカメラやセンサーフレームに温度変化が少ないインバーが使用されます。
FN315(スーパーインバー)という材料も開発されました。FN36よりさらに熱膨張率が少なくい材料です。
抵抗率75-85 μΩcm
ヤング係数140-150 GPa
せん断係数57 GPa
ブリネル硬度160
破断伸び< 45 %
レジリアンス (20°C)140-150 J/cm2
ポアソン係数0.22807 (=E/2G - 1)
破壊限度450-590 MPa
密度8,125
線形膨張係数(20-90°C)1,2-2,0 x 10-6 K-1
熱伝導率 (23°C)13 Wm-1K-1
比熱容量510 JKg-1K-1
42ALLOY(42アロイ)について
42アロイは、硬質ガラスに近い熱膨張係数を持つ金属材料で、ガラス風着される電子部品の電極に利用されたり、リードフレームなどに用いられます。
ガラスと金属を組み合わせて使用する場合、お互いの材料の熱膨張係数に差があると、温度変化したときに不都合が発生します。
例えば一般の鉄とガラスを組み合わせると、鉄は熱膨張係数が大きいので熱膨張が大きいが、ガラスは熱膨張係数が小さいため、ガラスに引っ張り応力が働き亀裂が入ってしまいます。
42アロイはガラスとハイブリッドに使用する場面で特性を発揮できます。
密度 / g cm38.15
融点1430℃
電気比抵抗0.635μΩ・m 20℃
熱伝導14.6 W/(m*K)
熱膨張係数30?330℃ 45?65 * 10-7/℃
磁気変態点330℃
Kovar(コバール)について
コバールは鉄にニッケル、コバルトを配合した合金で、熱膨張係数が広い温度範囲でケイ素酸系のガラスやアルミナ系のセラミックに近い性質があります。
その性質から、ガラスやセラミックと接触させることができ、お互いをつなぐのに便利な合金です。
セラミックと組み合わせて使用される事が多く、ICリードフレームのハーメチックシール、トランジスタのリードキャップ、水晶振動子のケースなどに用いられます。
近年ではチップの小型化によりコバールから、導電性に優れた銅合金が利用されるケースも増えてきました。
コバールの加工性はあまり良くなく、難削材と言われます。
加工硬化が大きく、熱伝導性が良くないことと、金属親和性が高いため、構成刃先が生じやすく、チッピングや寸法の不安定な要素になります。
密度 / g cm38.0
硬さ / HV1160
ヤング率 / GPa159
破断時の面積減少率 / %30
降伏強さ / MPa270
熱伝導率 / W/Km17
キューリー点 / °C435
電気抵抗率 Ω mm2 / m0.49
比熱 J/gK0.46
熱膨張係数/10-6 K-1 (25 ? 200°C)5.2
(25-300°C)5.1
(25-400°C)4.9
(25-450°C)5.3
(25-500°C)6.2
まとめ
従来の素材から、低膨張金属に素材を変更することで、温度変化に対する機器の性能や精度を向上させることができるため、近年とても問い合わせが増えてきた材質です。
CFRPやGFRPなど樹脂系の温間金型に使用されるケースが増えました。インバーなど熱膨張しない材料は、金型の冷却など温度管理をしなくても精度が維持できます。
クリーンルームや調温ルームの外で使用されるセンサーフレームや測定器をインバー製に変更することで、寸法精度が向上し性能向上につながるなど、可能性を秘めた材料ですね。
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