アルミニウム合金について
アルミニウムといえば、軽さを想像し、用途は航空機が思い浮かぶのではないでしょうか?
アルミニウム合金は軽さと優れた強度が特徴ですが、たくさんの種類が存在し、その特性を把握し用途によって、的確に使い分けないと思わぬ失敗を招く結果になります。
アルミニウム合金は含有する成分で分類されます。
マグネシウム(Mg) マンガン(Mn) ケイ素(Si) 銅(Cu) 亜鉛(Zn)に分類されます。
航空機としては2000系アルミニウム合金(Al-Cu-Mg)と7000系アルミニウム合金(Al-Zn-Mg)が使用されます。
2000系アルミニウム合金は疲労強度に優れる特性があり、7000系アルミニウム合金はアルミニウム合金のなかで最も強度に優れる特性があります。
よって応力の方向や強さなどによって使い分ける必要があります。
銅系の2000系も亜鉛系の7000系のどちらも耐蝕性に劣ります。よって航空機に使用する場合は、海水や潮風による腐食を防ぐために、薄いアルミ材とクラッドで使用されるケースが多いです。
近年ではアルミ合金から、炭素繊維プラスチック「CFRP」の割合が増えてきました。CFRPは比重がアルミニウム合金の半分と軽く、疲労強度、耐蝕性に優れているため、航空機の部材としは年々増加してきています。
航空機とアルミニウム合金
アルミニウム合金は種類によって特性が異なるため、航空機を例に使い方を説明します。
飛行機の翼は飛行時に、機体の重量を支えるため上に大きく湾曲します。
その状態では翼の上面は圧縮応力がかかり、翼の下面は引っ張り応力が作用します。
よって翼の下面は引っ張り応力に対する疲労特性に優れる2000系アルミニウム合金を使用し、翼の上面は圧縮応力に優れる7000系アルミニウム合金を使用します。
翼の接合部の構造体は応力が集中するため、強度に優れる7000系を使用しますが、疲労特性と強度に優れるチタン合金等も使用されます。
そして近年ではアルミニウムとリチウムの合金が開発されました。アルミ+リチウムの合金は従来のアルミニウム合金より疲労強度特性に優れ今後使用用途が広がっていきます。
アルミニウム合金は優れた材料ですが欠点も存在するため、特性を理解し最適な種類を選択する必要があります。
アルミニウム合金と複合材について
アルミニウム合金は軽くて強度に優れた材料ですが、疲労強度が問題となるケースが多く発生します。
そのため多の金属や材質と積層させることで弱点を補完し、さらに性能の向上を実現することができます。
近年ではアルミニウム合金にGFRP(グラスファイバー)を積層グレアと呼ばれる材料が開発されました。引っ張り強度に優れるグラスファイバーとアルミニウム合金を積層することで、引っ張り応力に対する疲労特性が大幅に改善し、さらに弱点であった腐食に対しても耐腐食性が大幅に向上しました。
しかし長所があれば短所もあるのが金属材料です、良いことばかりではありません、引っ張り強度が強化されたため、破断ひずみが小さく衝撃による破断が起こりやすくなりました。これはアルミニウム合金単体で使用した場合より悪い結果となります。強度と靱性の両立は今後の開発の課題です。
マグネシウム合金について
マグネシウム合金は、アルミニウム合金と同様にとても軽くて強度に優れた材質です。
資源量も豊富で1Lの海水中に1.3グラムも含まれているため、他国から調達しなくても国内で自給できる可能性を秘めています。
マグネシウムの比重は1.74でアルミニウムの2/3ととても軽量で、比重に対する強度(比強度)は鉄より高い特徴があります。
マグネシウムはアルミニウムや亜鉛を添加した合金として使用することで、さらに強度が高くなりAZ91合金などは、比強度及び比剛性はポリカーボネートやABSアロイを大きく上回ります。
マグネシウム合金は熱伝導率に優れます。
マグネシウム合金の熱伝導率は70W/m・Kとプラスチック素材の200倍近い熱伝導率を誇り、筐体に使用した場合、筐体にヒートシンクしての役割を持たせることが可能です。
マグネシウム合金は電磁波シールド性に優れます。
ロードセルやセンサーの増幅装置の筐体に使用した場合、ノイズによる影響が減少するため、ゲインを上げることができ計測精度が向上します。
優れた特性を持つマグネシウム合金にも、良いことばかりではありません。最大の短所は伸びが極めて少ないため、常温での塑性加工による成形が難しいのです。
よってダイカストあるいはチクソーモールディングによる成形が行われるのが一般的ですが、筐体やカバーとして使用するには薄板を製造する必要があります。
そこで300-400℃の温度で良好な伸びが得られる、AZ31というマグネシウム合金が開発され、温間圧延加工にて薄板の製造が可能となりました。
現在ではAZ31は30ミクロン程度の箔まで製造が可能となり、振動板として使用すると良好な特性が得られます。
マグネシウム合金は溶解した状態、あるいは切りくずのような状態で空気に触れると激しく発火するため、取り扱いは慎重である必要があります。
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