ブランディングのハードル
弊社はレアメタルやニッケル合金の材料が売り上げの大半を占めています。
ニッケル合金だと1kg/8000円くらいする材料なので、100kg売ろうと思ったら80万円也!!
ふつうに考えればこれが海外に売れるわけがないよね、私だったら間違いなく国内から調達します(笑)
まして取引実績の無い会社からだったら100%無いですね。
現地に営業所があるような規模の会社ならば、問題にならないと思いますが、中小製造業が現地に営業所なんてハードルが高すぎます、だからといってこれを解決させないことには取引につながりません。
だからハードルを少し下げることで得られる、取引の最初のキッカケとそこからの信頼の構築を考えてみましょう!
取引の基本は国内も海外も同じです!
取引の基本は国内も海外も同じですね、お得意さんとの取引の歴史って最初は単価の安い取引から始まって、少しずつお互いの信頼関係を構築していきながら、取引が育っていくものだと思います。それは海外との取引も全く同じなのです。
しかし海外の場合はその「1回目」の取引のハードルが高いのです。「1回目」をなんとかして物にしないと、信頼関係の構築も何も全く話が進まないのです。
とうぜん単価の高い製品がいきなり売れる訳ないので、最初の一歩の「小さい取引」をするための製品をブランディングしました。
ハードルの低いブランド戦略
自分に置き換え、自分が海外からでも「購入してみようかなー!」って思える製品って、どのような条件になるだろうかと自問自答しました。
そして基本的な5条件に絞ってみました。
1.価格は20,000円程度
2.比較的調達が難しい
3.用途がシンプルでわかりやすい
4.使ってみようかなーって思わせる製品
5.サンプルやノベルティーはNG、「製品」で実際に使用して性能を評価できるもの!
自社の製品でこの5条件に該当する製品なんて、もちろんありません。
だけど5条件をクリアするため「製品の選択」と「ブランディング」を考えました。
どうせなら高価でレアなものが気軽に購入できる!みたいなほうがインパクトが有ると考え、「R&D Materials」ブランドの第一弾としてレアメタルの「モリブデン」という材料を販売することにしました。
モリブデンは、35,000円/kg位する高価な材料で耐熱性に優れます。電気炉のヒーターとして使用した場合、一般的なニクロム材よりも耐高温性能に優れるので、炉の最高温度をさらに高温にすることができます。高いけどね!
あくまでも産業用なので、従来から電熱メーカー向けに300kg単位で製造していた材料ですが、これを1m単位で小売することにしました。
単価は1本20,000円で即納!
従来のニクロムから材質変更することで、「電気炉の最高温度が+100℃向上します!」というタイトルで宣伝しました。
これなら1-5番まですべて条件は満たしています。
結果は?
まあ狭い分野のニッチな製品なので、爆発的には売れませんが、それでも月10個ほど売れました。もちろんこれを売っても海外向けの梱包や海外への発送の手間を考えれば、儲かるものではありませんよ。
でも海外取引の実績を作りたい一心で続けていきました。
なんだかんだで30社ほどと取引できたころ、ドイツのANKUROという会社が定期的に購入してくれていたので、「いつもありがとう!私はドイツ国内で代理店を探している」とお話したところ、ぜひ日本製の材料を代理店として取扱いさせてくれ!という流れになって、弊社で最初の海外の代理店を持つことができました。
拍子抜けするくらい簡単に代理店なんて作れるもんなんだなーって(笑)
そして今でもANKUROの社長とお互いに会社を訪問しあったりして「信頼関係」を続けています。
さいごに
今回は「ハードルの低いブランド戦略」というテーマで考えてみました。
利益を出すためのブランドではなく、海外の会社との取引の実績を作るためのブランド戦略というもの考えてみてはどうでしょうか?
海外取引が成功しない原因の一つに「1回目」の取引が成立しないからというケースがとても多いと思います。私も「1回目」の取引が成立するまで、あれこれ悩みながらも1年以上費やしました。
さいごに、だからといって無料で配ってはいけません!
本気度のあるお客としか付き合いたくないので、無料サンプルをよく要求されますが、有償サンプルしか出さないようにしています。
最初は無償サンプル出したこともありますが、そこからつながったケースは皆無で、お金のやりとりというハードルを乗り越えてこそ初めて、信頼関係って築けるのかな?なんて考えています。