売れる要素の分析
売れる要素の分析」というテーマを考えていきます。
マシニングセンタやプレスなどで様々な分野の部品が製造されますが、「プレス屋」「削り屋」と一括して括られてしまい、なかなか差別化が難しいと思います。
だから製造している製品をしっかり分析することで、自社の強みを再度確認して力強く発信していこう!
という内容です。
お客さまは何故、あなたの会社の製品を買ってくれるのですか?
ちょうど台湾の会社の異型断面材料のプロモーションを依頼されたので、これを題材に考えていきます。
上の写真は引抜き加工という製法で製造された異型断面材料です。
異型断面材料とは文字の通りに、いろいろな断面形状の材料で、電子部品、工具、産業機械、腕時計のベルトのような装飾品まで、さまざまな用途に使われます。
引抜き加工という製法の歴史は古く、同業者も多いためどうやって差別化していくかが重要です。
差別化するためには、まず製品の強みをしっかりと分析する必要があります。
とにかく製品や会社に関する情報をヒアリングしました。
どんな会社だって、仕事の依頼がある以上何かしら強みがあるのです。
だから、ひと通り会社の説明を受けたあと、この質問をしました。
「お客さまは何故、あなたの会社の製品を買ってくれるのですか?」
その問いに対して、 弊社の製品は穴ダイスではなく、ロール引抜き加工なので寸法精度が良く、また表面粗度に優れている、だから欧州の腕時計メーカーにも出荷しているとのこと、精度に自信があるとのことです。
次に、「どのように日本国内でプロモーションしたいですか?」
との問に、台湾の低価格というイメージ「安かろう悪かろう」を払拭して、高精度と高級感を全面に出して、販売価格も日本の価値観で売っていきたいとのこと。
私も台湾の工場を訪問しましたが、たしかに品質は国内製品に負けず劣らずで、素晴らしい製品です。そして精度もJIS公差以上の高精度で生産されていました。
でも「うちの製品は精度がいいですよー」って宣伝すれば、売れるなら簡単なのですが...
欲張ると製品情報が薄まってしまいます
引抜加工なんて、100年以上前から存在している加工方法で、日本にだって精度や品質の良い会社がたくさんあります。だから「高品質・高精度」を前面にプロモーションしてもわざわざ外国から購入する訳ありません。「精度、品質」が良いというのは「アタリマエ」のことなのです。
その「アタリマエ」の部分をアピールしても無意味ですよね。
欲張って自社製品のすべてを一度にプロモーションしようとすると「精度、品質がいいですよー」とか抽象的なことしか発信できなくなるのです。理由は複数の製品情報を一度に発信すると、それらの共通項しか発信できなくなり、だから情報の内容が薄まってしまうのです。
濃い情報と薄い情報
いきなり話が変わりますが、「浅草観光に行きたい!」という方に説明するとします。どのように説明しましょうか?
1.日本はこんな国です!
2.関東地方はこんな特徴があります!
3.東京都はこんな町です!
4.浅草の見どころはここです!
さて、どの情報が重要でしょうか?考えることもなく浅草に観光したいのだから、浅草の情報をピンポイントでほしいですよね。
お客さんが必要としている「情報」をしっかり提供することが大切です。
ついつい欲張って、数多くある製品を一度に紹介したいと考えてしまいますが、絞り込んでいけば行くほど内容の濃い情報を発信できます。
内容の濃い情報を発信することで、「この会社ならできそう」から「この会社なら出来る!」という確認に変えることができます。
自社の製品が何に使われているか知ってますか?
この会社の製品は、基本的にお客さまからの図面を元に製造しているため、全製品の40%くらい何に使われるか用途がわかっていませんでした。
何に使われるか分からなければ、自社の製品がどのような分野に使われているか分からないので、プロモーションができませんよね、とにかく用途がわからないと産業の分類できないので、営業担当に顧客フォローをかねて部品ごとに用途を確認するよう徹底しました。
自社の製品が、どのように使われているかを調べるのは、あたり前というか基本ですね、でも肩まで下請けに浸かってしまい、それすらわからない会社がけっこうのあるのですよ(笑)
用途ごとに分類することで見えてくるものとは?
製品の用途がわかったところで、使用されている産業の分類分けをしてみました。そうするとこんな感じになりました。
1.工具部品: スプリングロック、ラチェット用歯車、エアーツールのインパクト部品
2.機械部品:スプリングロック、一方向クラッチ
3.医療機器:小型定量ポンプ用インペラ、インプラント
4.繊維衣料:編み機、紡績機用ガイド部品
5.摺動部品:ガイドレール、ベアリング(インナー、アウター)
6.ろ過機:金属フィルター用ウエッジワイヤー
7.電気部品:コネクタピン、スイッチ用接点、抵抗線
8.自動車部品:内燃機用ピストンリング、歯車用キー材
9.装飾品:時計ベルト、メガネ部品
10.規格品:フラットバー、六角バー、四角バー
とりあえず10種類の分野に分類しました。
装飾品から自動車までさまざまな分野の部品がありますね、これらを一まとめにして「異形材料を製造します!」って、宣伝しても効果がないことは目に見えてますね。
だけど、こうやって分類ごとにプロモーションすれば、専門的に深く情報を発信することができます。最低でも10冊はカタログが必要ですね(笑)
アイテムごとに丁寧にプロモーション
あせらないで順番にプロモーションするので、どれからにするか選択しないといけません。
日本国内で競争できそうな分野で競合が少ない分野ということで、ろ過機に使用されるウエッジワイヤーからはじめました。
ウエッジワイヤーとは、△形状のバー材で、それを△△△と並べてその隙間のサイズで、液体中の粒子をろ過、通過をコントロールすることができる金属フィルターです。
精度が良ければよいほど、隙間のサイズが精密になるので、フィルターとしての性能が向上します。
方向性が決まればプロモーションできます。
「日本初!20μの精度で液中の粒子をろ過できます。」
と、この会社のウエッジワイヤーを使用することで、どのようなメリットがあるかを具体的に発信できますね。
分野を選択することで、内容の濃い情報=「お客さまにとって必要な情報」を発信できるようになります。
さいごに
今回は「要素の分析」というテーマで考えてみました。
一度自社製品を用途別に分類分けをしてみてはどうでしょうか?
もちろん手間はかかりますが、自社製品の要素をしっかりと分析して、製品ごとに丁寧にプロモーションすることで、精度、品質だけでなく、性能、効率、メリットなどさらに多くの情報を発信できます。
製品ごとにプロモーションすることで、具体的で内容の濃い、お客様にとって本当に必要な情報をしっかりと発信することが大切です。
今現在、異型断面材料を製造している会社で、1アイテムごとにプロモーションしている会社は存在しないので、他社より1歩前進できるといいですね(笑)