表面処理と金型の耐久性について

現在は金型の表面処理は当たり前のように行われていて様々な種類の表面処理が開発されています。

 

方法はは大きく分けて次の2種類に分類されます。

 

1.メッキやコーティングによる硬化層の成形
2.金型表面の改質による高硬度処理、潤滑特性改善

 

それぞれに長所や短所があり、金型の加工目的や金型表面の面圧などで最適な選択をすることで、金型の寿命を延ばすことが可能になります。
表面処理によって確実に金型の使用期間が長くなり、加工費に占める金型コストを大幅に削減できます。

 

ちなみに、弊社のIHP処理はメッキではなく、金型表面を改質し機能化させることで、高硬度化及び潤滑特性を向上し金型の摩耗を防止します。

各種表面処理の特徴

DLC「ダイヤモンドライクカーボン」処理
金属表面にナノレベルの薄膜を形成し優れた表面の特性を得られます。
低摩耗抵抗性(高硬度)、低摩擦係数、耐凝着性、赤外線透過性、ガスバリア性、耐腐食性など様々な機能があります。
しかし金型に使用する場合に押さえておきたいポイントとしては、DLC処理は優れた特性を持ちますが、剥がれやすい短所があります。
皮膜が硬く、金型の硬度と差があるため卵の殻のような状態になります。よって金型が扁平を繰り返すと剥がれやすい、よって面圧を低く抑える必要がある。
アルミ系の絞りやベンディングには最強!
DLC処理はバッチ式で処理するため、コストが高いのも短所ですね

 

 

ハードクロムコーティング(メッキ)
JIS規格では膜厚2μ以上、硬度HV750以上で耐摩耗性・耐食性・潤滑性に優れています。
硬度はHv700?1000位となり熱処理鋼、窒化鋼よりも高硬度となるが、加熱されるとめっき皮膜中の水素の放出され硬度が低下します。300℃以上になると硬度は急激に低下して
耐摩耗性も悪くなります。肉盛りめっきが可能で、最大で2mm厚のめっき処理が可能になります。
比較的安価に処理ができるが、300℃以上で軟化するため局部的に高温になる加工条件では使用ができない。また表面は鏡面だが粒界があるため粒界腐食が発生するため防錆効果は劣る。ガイドなど軽負荷の使用条件で最大の効果を発揮する。

 

 

窒化チタンコーティング
黄金色のコーティングでドリルや切削工具などでよく目にします。硬度は、HV2000〜2300で、他の表面処理と比べると劣るが、耐摩耗性と靭性に優れるためプレスパンチなどに使用すると効果が発揮される。また600℃程度の温度まで使用できるため、切削工具など局部的に高温になる加工でも使用できる。

 

 

IHP処理(WPC処理)
コーティングではなく金型表面を改質するため、剥がれが発生せず耐久性に優れる、処理コストが安価で、再処理時に剥離の必要がないため金型に使用される。潤滑特性、低摩擦係数、剥離性に優れるため幅広く利用できるが、無潤滑化では効果が期待できない。

金型と表面処理について

金型寿命までの加工個数が、1万個から2万個に増えれば、当たり前ですが金型コストは1/2となり利益率は改善します。
それゆえに様々な表面処理が開発され、プレス加工メーカーも表面処理を利用するノウハウを向上させてきました。

 

金型の摩耗を防ぐためには、金型表面に硬化層を形成することが効果があるため、コーティング(メッキ)処理は古くから金型に利用されました。そして超高硬度の表面処理も開発され、金型の耐久性は著しく向上しました。

 

しかし金属のプレス金型は過酷な条件で使用されるため、コーティング(メッキ)は剥離する問題は深刻で、バインダーなどコーティング前の表面の開発も進んできましたが、金型表面に卵の殻のような硬い皮膜が乗っているような状態のため、確実な密着は現在でも完成していません。熱膨張係数や材質、硬度、伸びも異なる同士なため難しいのです。
DLC処理などは剥離が発生しなければ、かなり長期間使用できるだけに剥離問題は深刻ですね。

 

さらに再処理(再コーティング)も問題となっています。
再処理をするためにはコーティング層すべてを剥離してから再処理をする必要があります。しかし高性能な皮膜は剥離が難しく、エッチングによる溶解などで対応することになるため、剥離処理+再コーティングを行うと再処理コストが高くなってしまう問題があります。DLCなどは再処理を受け付けていないメーカーもあるので注意が必要です。

 

近年になって、コーティングではなく金型の表面を改質することで耐摩耗性を向上させる表面処理場開発されました。
硬い層で金型の摩耗を防ぐのではなく、表面を機能化させることで耐摩耗性を向上させる処理で効果に優れるため、自動車部品に使用されるハイテン鋼の金型などから利用が広がっています。
コーティングではないため下地の必要がなく処理コストが安価で、再処理も容易なため費用対効果に優れた表面処理で急速に広がっています。

 

さいごに宣伝ですが、弊社のIHP処理も、この分野の表面処理になります。
効果を確認して頂くため初回試作は無料で処理します、なんなりとご相談ください!

IHP処理と虫食いの防止

金型の寿命としては、摩耗による使用限度の限界が理想的なのですが、虫食いといわれる表面の剥離やヘアークラックの発生でも使用不可になるケースも多々あります。
金型の使用期間が短い場合でも使用不可になり、金型修正費が加工コストを悪化させます。
コーティングの剥がれも同様でコーティング層が摩耗するまで使用できれば良いのですが、1箇所でも剥がれが発生すれば高額なDLC処理でも使用不可になります。

 

IHP処理の特徴の一つに金型の表面組織の微細化があります。
金属の特性として、金属組織が大きいと割れやすくなります。鋳造品は組織が大きいため落としただけで割れますよね
逆に微細化した組織は金属疲労に優れ割れにくくなります。

 

これはクラックは金属の粒界から発生するためだからです。熱処理によって大きくなった粒界は割れやすいのです。
IHP処理は金属表面の組織を微細化させます。

 

その効果で、剥がれ、クラックの発生を防止することができます。

IHP処理と耐摩耗性の効果

従来の表面処理は高硬度の皮膜により耐摩耗性を得ていましたが、近年では金型表面に強力な油膜を保持させることで、金型とワークの直接接触を防止することで理論上金型が摩耗しなくなります。また接触しないため加工熱の発生を抑え金型表面の軟化も防ぎます。

 

どうやって強力な油膜を保持するかというと、近年耳にすることが多くなった「マイクロディンプル」ということになります。
表面コーティングされたツルツルの表面は油膜を保持できないため、プレス加工時にワイパー効果で無潤滑になります。これは摩耗と発熱の大きな原因になります。

 

マイクロディンプルは金型表面にミクロの滑らかな凹を形成し潤滑油を保持させます。このディンプルは金型とワーク間の圧力が高くなるほど反作用が発生し、金型とワークの接触を防止します。
それにより金型の摩耗を防止します。

 

この考え方は従来からあって、チタンの絞り加工をする場合、通常では焼付いてしまうのですが、チタン材の表面をショットピーニングで荒らしてからプレス加工をすると焼き付きが発生しないのと原理は同じです。
これはショットピーニングで荒らした凹に潤滑油が保持され、金型と材料の接触を防止することで、加工温度が200℃以下に抑えられ酸化チタンの発生を防止できるためですね。

 

IHPはこの原理で材料ではなく金型側で油膜を保持させますが、油膜の反作用効果による特性なので無潤滑化では効果は得られない短所があります。

IHPと表面硬度について

従来の表面処理は高硬度の皮膜を金型表面に形成することで耐摩耗性特性を得ていますが、近年ではマイクロディンプルによる表面の機能化で耐摩耗特性を発揮します。
しかし表面硬度が低いとマイクロディンプルの寿命が短くなってしまいます。いくら再処理コストが安価だからといえ長期間安定してマイクロディンプルを維持する必要があります。

 

IHP処理では高比重の粉体を圧縮エアーで金型表面に高速衝突させます。
瞬間的に表面が高温になり急速に冷却されます。それにより表層焼き入れ効果が得られHRC70程度まで硬度が上昇します。
この効果で長期的な効果が維持できるのです。

 

IHPと剥離効果

最近樹脂成型金型関連で剥離性に関する試作を樹脂プレス加工メーカーと共同で実験しています。

 

サンドブラストで荒らした表面だと樹脂が凹凸に引っかかるように付着するが、IHP処理は滑らかな凹なので剥離性が向上した。
離型剤の保持が向上するため塗布の回数が減少した。
樹脂表面はマットな仕上がりになるが手触りはツルツル

 

弊社は金属加工メーカーなので樹脂に関する経験は少ないのですが、樹脂の剥離性でご興味がありましたら相談ください。